ドキドキでワクワクを手に入れる

子供のころの出来事で鮮明に覚えている場面があります。
4-5歳ぐらいだったでしょうか。お向かいの「ノブちゃん」という同い年の男の子が、一人で家の前で遊んでいました。私は心の中で「一緒に遊びたいな」と思いながら、自分から「遊ぼ!」と気軽に誘うことができなくてウジウジ。そこへ母がやってきて、「ノブちゃんと一緒に遊びたいんやったら、自分から誘いなさい」と言ったのです。

そう言われて「遊ぼ!」と言えるぐらいなら、最初から声をかけていたでしょう。その後、半時間ほどやっぱり誘えなくてグズグズ。今から考えると、ノブちゃんも私と遊びたかったのでしょう。こちらをチラチラ見ながら、相変わらず同じ場所で遊んでいます。

しばらくして玄関に出てきた母に、「まだ誘ってへんの? 自分で声をかけないといつまでたっても遊べるわけないよ」と半ば脅され、泣きそうになりながら勇気を絞って「遊ぼ!」と言ってみたところ・・・

ノブちゃんは「うん、遊ぼ!」と即答。私は「これでお母さんに怒られないですむ」とホッとしたのと、「思いきって誘ってよかった」と嬉しかったことが記憶に残っています。

これをきっかけに私は変わりました!と言いたいところですが、そんなことにはならず、今でも自分から一歩を踏み出すのが大の苦手で、「誘って断られたらどうしよう」「こんなことを言ってイヤだと言われたら…」とクヨクヨ悩んでいます。

昨年のことです。担当していた講座の生徒さんから、「日本で暮らしたこともあるイギリス人の友人が、英日通訳の勉強をしたいと言っているのですが、通訳の勉強を教えてくれるところを知りませんか?」と聞かれました。

私が「もちろん学校や講座は紹介できるけど、良かったら私と勉強会するのはどう?」と言うと(そんなところはちゃっかり売り込むことができるのですが)、「本当ですか? 彼女に伝えます。きっと喜ぶと思います」との返事でした。

・・・が、連絡なし。
「こちらから連絡してみようか、でも忙しいのかもしれないし。もう少し待てば向こうから連絡がくるかも」と、気になりつつも日常に追われ時間が過ぎていきました。
そんなときにコロナがやってきて、仕事もキャンセル、外出もままならずという状況に。
そのころにはすでに数か月がたっていたので、「今頃連絡しても、もうすっかり忘れているんじゃないかな」「今さらだけど、こちらから連絡してみるべき?」としばらく逡巡。でも思いきって、紹介してくれた生徒さんにメールをしてみました。

生徒さんからはすぐに返事がきて、イギリス人の友人、ヘレンに連絡を取り、顔合わせのzoomミーティングを数日後に設定してくれたのです。

おかげさまでトントン拍子に話しは進み、こうして4月から週に一度、二人で通訳勉強会を開始し、それは今も続いています。日本語に堪能で、教えることへの熱意やアイデアに溢れ、素晴らしい気配りの持ち主、ヘレンは最高の勉強会パートナー。コロナで外出もままならない時期に世界の向こう側にこんなステキな友人ができるなんて想像もしませんでした。

あのとき、「もういいか」と諦めていたら、この出会いはなかったでしょう。まずはドキドキしながらも自分が行動を起こしてみる。縁はこちらから作り出す。そうすれば、きっとワクワクできる楽しい時間が待っているんだと改めて思いました。

 🌸小宗睦美

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