嬉しい出来事

嬉しい出来事

今日は6月30日。なんと!2021年前半の最後の日ですね。
コロナのせいで外出が減ったせいか、すべての記憶がうすーくぼんやりとした印象。いやいや、それは私の記憶力が悪いだけかもしれません。
毎日同じだけの時間は過ぎ、バタバタしているうちに半年過ぎたという感じですが、これが積み重なって気がつけば一年、二年…十年・・・と経っているのでしょうね。

こんなふうにあっという間に年月が過ぎて行き、私の通訳歴も20年を超え、年齢とキャリアを考えると今や立派なベテラン通訳者。面の皮もかなり分厚くなっているはずですが、実は今でも通訳の仕事を引き受けるたびに「なんでこんな難しそうな仕事を引き受けたんだろう?」と毎回ビクビクしながら現場に行くという小心者です。

仕事を終えたあとはたいてい「引き受けてよかった!」と思うのですが、「私で本当にお役に立てたのかな」と落ち込むこともやっぱりあります。ただ、どれだけ落ち込んで「通訳を辞めたい」と思っても、記憶力の悪さが幸いして(笑)、しばらくするとブルーな気持ちを忘れ、また懲りずに仕事を引き受けている、そう考えると、忘れることも大切なことかもしれません。

また、通訳の仕事を通じてこれまでまったく知ることのなかった世界や人に接することができたり、「あなたがいてくれたおかげで大変助かりました」という温かい言葉をかけてもらったりしたときは、通訳をしていて本当に良かったと感じます。

最近、そう改めて思った嬉しい出来事がありました。

このところイベント通訳の引き合いもほとんどなく、めっきり疎遠になっていた通訳エージェントの社長さんから、二週間ほど前に突然電話がかかってきました。
いつもはメールでのやり取りなのに、今回は電話、コロナ禍だというのにどんな急ぎの案件があるのかとびっくりして電話にでました。すると、十年以上前に数回通訳を担当させていただいたクライアントさんからお礼の品を送りたいので私の住所が以前と変わっていないかを知りたいと連絡がきたので、確認したかったとのこと。

そのクライアントさんは海外から機械を輸入している専門商社の社長さんでしたが、商談に同行し、プレゼンの通訳をした記憶はあるものの、どんな機械を扱っておられたのか、どの会社に同行したのかはまったく覚えておらず。ただ、当時、通訳に同行したあとは必ず美味しいお昼ご飯に連れて行ってもらったことは覚えていました。

私がご一緒していた頃から十年以上たち、その後経営は息子さんに譲り、その社長さんは一線を退かれたとのことですが、私が商談に同行した会社と成約にいたったことがきっかけでそれからドンドンと取引が広がったと喜んでおられるとのこと。

少しでも関わったクライアントさんの事業が順調だと聞いてそれだけでも十分嬉しかったのですが、後日「あなたの通訳のおかげと今も感謝しています」と書かれたお手紙と私の大好物のフルーツケーキが自宅に送られてきました。

「なぜ今ごろ?」と正直なところ不思議に思い、そして私の通訳の「おかげ」で商談が成立したということはあり得ない…と冷静に思い、でも、こんなに長い間、私のことを温かい気持ちで覚えていて下さったこと、これはまぎれもない真実。そう考え、本当に嬉しくありがたく思いました。

嬉しい出来事と落ち込んだ出来事を比べると、嬉しい出来事はすぐに記憶の中で抹消され、落ち込んだ出来事が長く残りがちな私ですが、今回はフルーツケーキの味とともにしっかり記憶に刻んでおこうと考えています。

(小宗睦美)